(ラジオ工房) トリオ 9R−59Dの修理 音が悪い Sメーターが振れない

感度が猛烈に悪い NHKの受信で Sメーターが2から3しか振れないということです。

この機種は素人の組立品なので 費用がかかるので自分でやったらということで返事していたのですが、
どうしようもなく  京都のハムショップに持ち込んで調整してもらったそうです。
(伝票 参照)



それでも解決しないので 当方に再度持ち込まれました。


なお550Ωに変更したというR3は約100Ωの抵抗2本直列に変えられていました。
カソード抵抗を 大きくすると 感度が落ちますので 元の値に戻すのは 当たり前ですが、なぜこんな作業をしたのか不明です。
さらにC9はオリジナルと全く同じコンデンサー(メーカー 外形 容量とも)が組み込まれていました。
これも追加したとはとても思えない工作でした。
IFの調整はされているようでしたが メインダイアルの校正は全くといいほどされていません。
目盛と受信周波数に大きな差が有るのです、トラッキング調整したと書いてあるのですが 何をしたのでしょう。

下記画像は到着時の シャーシ内部




さて受信してみて感じたのは メーターが殆ど振れない 音が歪んでいることでした。
中間周波増幅なしのスーパーより 感度が悪い感じです。

原因の追求

オークションでの売主も ハムショップもメーターが振れないのはアンテナのせいと 思い込んでいるようですが、
現象から見ると 音が歪んでいるので 明らかに故障です。

みなさん アマチュア−無線を楽しんでいるようですが 正直 これが本当と信じているならレベルが低いです。
我々の時代は送信機 アンテナ 受信機まで自作していましたので とてもこのレベルは信じられません。

原因は下記画像の 抵抗の天ぷら半田が原因でした。
黒い 矢印の部分。

判ってみると 単純ですが 簡単には気が付きませんので 見つけるには経験が必要です。



回路図上では下記の部分に相当します。
赤い X印の部分が相当します。



半田を外したところです、半田つけ面が 絶縁材みたいなもので覆われています。
これでは基板に導通が無いのは当たり前です。
おそらく 大昔 組み立てた時に ペーストをつけすぎたのかも知れません。
原因は 不明ですが この種の自作品の修理は メーカー組立品より よほど経験がないと対応出来ません。



上記 抵抗が半田付けされていたパターン面です。
矢印の部分が該当します。
画像をよく見るとリード線の先端や半田つけ面が何となく怪しいです。
この部分が接触不良を起こしていたようです。

実は この不具合部分は写真にとって拡大してみて、ここだったのかと判ったことで 
ちょっと見には不都合は見つけられませんでした。



念のため 全体の回路図を示します。




トラッキング調整済みという ダイアルを見てみると とても校正したようにはおもえません。 これで受信できるようになったので 念のため MWを受信してみました。
ダイアルの目盛は狂いが多く とても校正した形跡がありません。
ハムショップは何をしたのでしょう。
 受信放送局 目盛 
 NHK1
594KHz
 
 TBS
954KHz
 
 文化放送
1134KHz
 
 日本放送
1244KHz
 
 JORF
1422KHz
 



RFゲインVRの残留抵抗

RFゲイン調整のVRは幸いな事に オリジナルが残っていました。
このVRは右回りで回しきった位置でスイッチがオンになる 特殊品です。
現在では入手できません。
ただ問題は残留抵抗が数十Ω有るのです、このため 常にゲインを下げた状態で受信することになります。
実はこの数十Ωも馬鹿にできないのです、Sメーターの振れが落ちるのです。

たあらま このスイッチはマーカー用で 使われていなかったので SW ONで残留抵抗をショートする回路に使いました。
空色の配線を2本追加です。
これでNHKの受信レベルが+10dB程度良くなります。



不思議なこと

この9Rー59Dに使われているコイルパックは 様子が変なのです。
トリマのネジの頭がすべて錆びているのです。
なぜこのようになったか 判りません、このようなものは初めて見ました。
水没品とも考えたのですが シャーシ部分は錆びていないし 理由は不明です。




ロータリースイッチ

どうも 昔 接点復活剤をかけたような形跡があります。
効果はあるのですが 使い方が難しいのです、うかつにかけると 漏電し 発火することさえ有ります。
ベーク部分にかけてはいけません、非常に危険です。
なお調整ネジ以外の鉄ネジも錆びているので よほど保管場所が悪かったのかも。








AC電源回路に 安全規格以外のコンデンサーが使われていたので これは交換しました。
右下部分は 抵抗の不具合部分(上記に説明)に相当。



出力管のグリッド結合コンデンサーはリークがありましたので これはフイルムコンデンサーに交換しました。



ダイアル面のシール

どうもこのシールのある9Rー59Dは 悪い思いが多いです。
どなたが貼ったのか不明ですが トラブルが多い感じですね。



調整して 終了です。
なおこの機種は バンドスプレッドダイアルを バリコンが最も抜けた位置に固定してメインダイアルを校正します。
目盛は 結構正確に校正出来ます。

トラッキング調整しないと 高感度にはなりません、RF増幅つきですから 
未調整だと 逆にRF減衰器になり 感度が悪くなることが有ります。
なおSWについては感度試験をしました。
今まで修理したものに比べ 多少悪い感じです(10dB)。
どこが原因かは不明ですが コイルの劣化だけでなく ロータリースイッチやトリマ類も影響している可能性もあります。

594KHzの受信例




Bバンド 3.9MHz帯の受信例

Bバンド AM受信



Cバンド(12MHz付近)の受信例



Cバンド 6MHz帯の受信例(ラジオ日経6055KHzと思われる)



Cバンド 6MHz帯の受信例(ラジオ日経6115KHzと思われる)






SSB受信

FUNCTIONスイッチをSSB-CWの位置に バンド切り替えスイッチはCバンド。
別途準備した 1MHzマーカーを外付します。
バンドスプレッドダイアルを7.00MHzに合わせます(右側のダイアルのB1目盛)。
この状態で マーカー信号を見つけます。
メインダイアルのCバンドの目盛を見ると目盛板に7MHz付近に 小さくB1と書かれたところがあります、
この付近でマーカーが受信できます Sメーターが大きく振れる位置に合わせます。
これでバンドスプレッドダイアルのB1目盛が直読目盛になります。
下記画像では 7.070MHZ付近と読み取れます。
アマチュア−局は放送局程 Sメーターは振れません。
左端のBFO FREQUENCYツマミで微妙に調整してSSBを受信してください。



2015年5月19日
2015年5月28日






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