hallicrafters WR-600の修理

感度が猛烈に悪いです。
短波帯でかろうじて受信しているのはBAND 2までで 3は微か 4に至っては全く受信していません。
調べてみると BAND4は局発が全く動作していません。

受信してみているところです。



真空管の構成は12BE6 12BA6 12AV6 50C5です、整流はセレンを使っています。。
TV-10で試験してみると 真空管は特に悪くは無いようです。



修理前のシャーシ内部。

この機種はトリオが組み立てたという噂が あるようですが 部品はすべてアメリカ製と思われます。
配線もアメリ独自のからげ配線で ハンダを外すのに苦労します。



 

まず通電してみると MWとBAND2はかろうじて受信します。
BAND3は微かに受信する程度で BAND4は全く受信しません。
IFTの調整が狂っているらしいと455KHzに調整し 目盛合わせとトラキング調整をやってみました。
これでBAND1〜3は一応受信することが判りました。
それでも 感度が悪いです、実はIFTの調整で検波段の上側のコアが固着して全く動かないのです。
他の3箇所は調整できたのですが この部分だけ 駄目でした。
どうも締めすぎたようで 調整用の−ネジ部分の溝が少し欠けたようになっています。

更に BAND4が受信しないのは局発が停止していることが判りました。
OSCのコンデンサーや抵抗(安定化)の不具合を調べてみましたが 問題ありません。
試行錯誤の結果 B電圧が下がっていることが原因と判明しました。
日本では100Vで使用するので どうしても設計値より低くなることは仕方がありません。

電圧対策として平滑抵抗(1KΩ)にパラに1KΩを接続し、合成抵抗を500Ωにすることにしました。
こうすることでB電圧が少し高くなります。
平滑用のケミコンは倍増の100μFにして ハムが増加することは防ぎました。

下記図の50C5のG2の部分にケミコンと1KΩを接続してあります。
この点からB電圧が各所に供給されます。
なおアメリカで使う場合はこの1KΩの抵抗を外してください、他はそのままで大丈夫です。


図の右側がIFTの部分です。
配線がからげ配線なので取外しは 大変でした。

まず自動半田吸入器で半田を吸い取り、残った部分は更に半田吸取り線で始末します。
基板ではないので 吸いとり機でも綺麗に取れません。

IFTの不良対策

感度が悪いのはIFTの調整不良と目処を付けて 対策をします。
このような判斷をするのは総合的に状況を見て決めることです。

IFTを分解したところです、幸いコアは割れていませんでした。
交換まで考えていたのですが 良かったです。
ここまで分解すると 手でコアが回せますので 固着をほぐし コアの位置をずらせて組み立てました。
IFTの構造は下記画像のようになっています。
同調コイルは基部に組み込まれていました。
固定式のマイカコンデンサーのようなもので、アメリカのラジオではよく使われています。




コアは日本製に比べ 大きく 中のコイルを覆いかぶさる構造です。

なお上側のコイルは2次側でした。

ラジオを同調した時 なんとなく選択度が悪いと感じたのは 
コアの締めすぎで 同調周波数が低くなり 
IFTの全体の共振カーブが下側に広がっていたためでしょう。

この同調周波数がいやに広いという現象もIFTを分解するきっかけにはなりました。

シャーシに組み込んだところです。
これで改めて455KHzに調整して 素晴らしい感度に回復しました。
ただ5球スーパーと同じですから 9R-59Dとは比較になりませんが。

ただBAND4の感度は良くありません。
こおれは9Rー59Dでも同じことで真空管式受信機の限界と思われます。




修理後のシャーシ内部。



調整ですが IFTの調整後 目盛合わせをします。
コアで低い周波数を トリマで高い周波数の目盛を合わせます。
なお この際 バンドスプレッドダイアルは100(バリコンの羽根が最も抜けた位置)にします。






目盛を合わせた後トラッキング調整をします。
BAND1(MW)は当然バーアンテナ方式ですから バーアンテナのコイルの位置を最適受信位置にします。
その他はコイルのコアとトリマで調整して終わり。
なお調整時 相互に影響して目盛が狂う事がありますので 最終的に狂いがないか再確認してください。
普通は必ず微調整が必要で 一回の調整で完了と云うことはありません。

この種受信機は音が出れば終わりではなく 正常に かつ感度も十分あることを確認してください。
なお この受信機はBFOが使えます、12BA6のG3を接地から1500ΩのVRで調整することで 発振させます。
この時AVCはVRのスイッチにより 470Ωで接地されます。
上記画像は7MHzのアマチュア−無線を復調(動画にリンク)しているところで、なんとかSSBも復調できます。



2015年12月18日
2015年12月20日:125
2015年12月21日:147








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中津

真空管ラジオ