原口無線電機株式会社製 キャラバンMR-300号の修理

 依頼人の修理報告は

@すべてのコンデンサーを交換。抵抗体は全部テスターにて問題無いことを確認しました。
A@同調バリコンを回しても、放送局電波を受信出来ない。
B再生バリコンを回しても、ピー等の発信音が出ない。
C検波管の57や、低周波増幅管の56のグリッドに、iPhoneのイヤホーン出力信号を入れると、スピーカーから正常に音が出る。

通電してみると 確かに57のグリッドで音が出ます、ここまではほぼ正常と思ってよいようです。
怪しいのはスパイダーコイルの接続方法(極性)を疑ったのですが、見つけられません。
インダクタンスは220μHあります。

再生バリコンも例のシールドバリコンが使われています。
容量的に問題はないようですが、Qが低いようです。








配線を調べてゆくと、バリコンの配線が間違っています。
G と Eの配線を入れ違えたらしい、これではバリコンがショート状態になります。
普通はありえない配線です、依頼主に質問したら どうも一度バリコンを取り外して修理したらしい。
このような情報はありませんので、見つけるのに苦労します。



配線を正常に直し 通電しても受信できません。
配線を外して Q(コンデンサーの良さ)をLCメーターで簡易試験してみましたが、
想像どうり 悪いです。

シールドバリコンはQが低下しやすく 過去の経験上も怪しいと思い、ポリバリコンに交換して受信してみました。
下記画像はポリバリコンを仮設した状態です。



これで正常に受信できることがわかりました。

後日 取り外したシールドバリコンを試験しているところ。
正式にはQメーターで測定すべきですが、これで簡易的には良くわかります。
下段が容量で、上段の数値が良さを表します。
バリコンの場合 ほとんど0.000表示で、同調回路に使われる場合は0.001でも疑ったほうが良いかも。




シールドバリコンが使えないことが判ったので、ポリバリコンで代用することにしました。
しかし ポリバリコンは最大容量340PFです、シールドバリコンの容量に足りません。
計算上 JOAK(594KHz)は同調できますが、それ以下の周波数は受信できません。

やむを得ず2連素子の1つを100PFでつなぎ合計最大容量を約420PFにしました。
これでバリコンの同調カーブは別にして、全周波数受信できます(525KHz〜)。





なお グッドリークの抵抗とコンデンサーは抵抗が高くなり 容量は減少しているようです。
このままで使えないわけではありません。




依頼主から送られてきた回路図

拙著 男の自由時間「真空管ラジオ・アンプつくりに挑戦!」の回路図がベース



回路図上の大きな間違いはありませんが、出力管のバイアス用コンデンサーの容量は明らかに不足です。
また平滑回路のコンデンサーの容量も不足です。
このままではハムがブーンという昔のラジオは再現できますが、現時点ではとても耐えられないでしょう。
なお 入力側のコンデンサー 出力側のコンデンサー それに平滑用の抵抗を掛け合わせた数値がより直流に近い電流にすることと比例します。
平滑抵抗を小さくする時はコンデンサーは逆に大きくしなくてはいけません。
今回の修正は この原理にも違反しています。

さらに ケミコンがケースにつめられていますが、爆発した時の防止策で密封は危険です。
ブロック型のコンデンサーには防爆弁があります、単体のケミコンは頭の部分が破裂するように切込みが入れて入ります。




シャーシ内部の配線は基本的に間違いありませんが、平滑用コンデンサーは容量不足です。
またバイアス用抵抗も3KΩの変化していましたので、1.5KΩに戻してあります。

なお再生用シールドバリコンもQが落ちていますが、抵抗も入れてあることだし、
絶縁の意味で150PFのコンデンサーを直列に接続しておきました。
これで再生バリコンとして利用可能です。




スパイダーコイルを取り外したところ、結合コンデンサーの漏洩電流は大丈夫でした。
このまま使えます。
ただし56のプレートの3000PFのコンデンサーは大きすぎますので、これも250PFに交換しておきました。

なおAC回路とシャーシの管に0.1μFのコンデンサーを入れてあります。
無いと不安定です。


2017年8月15日








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