マジックアイつき自作ラジオの修理(2018年1月14日)

自作品のラジオです。
おそらく昭和30年以降の製品と思われますが、詳細不明です。
小さなツマミはバンド切替スイッチです。
普通のマジックアイ付のスーパーとして販売していたものを急遽2バンドに改造して販売したのでしょう。
常識的にバンド切替スイッチをこのように配置することはありません。
ダイアルのパネルはSW付になっているので 後日改造したとは思えません。

真空管の構成は6WC5 6D6 6ZDH3A 6ZP1 12F 6E5(マジックアイ)です。

ただ電源トランスのB電圧が高すぎる(無負荷でAC275V)ので もともとよい設計とは考えにくいです。
このようなキャビネットキットは2バンドコイル キャビネット シャーシがセットになっているものと、
トランス 真空管 ソケット IFT など全パーツが揃ったものが販売されていました。
このキットはどれかは不明ですが、コイルにもメーカー名が無いので、
出来るだけ安価な部品を取り合わせキットとして販売されたものかも知れません。
コイルにメーカー名が記入されていない(無名メーカー品)ものは非常に珍しいです。




裏蓋にスイッチが組み込まれています。

調べてみると 片側に倒すと 出力管のプレートとスピーカーの配線が接続され、
反対側に倒すとACソケットの片側にアースが供給される仕掛けです。
この場合 ACソケットの別の片側は出力管のグリッドが接続されています。
ACプラグの先にハイインピーダンスの受話器(クリスタルイヤホーン)を接続すると、
スピーカーの音を消してモニターできる仕掛けのように想像しました。
(当然 この時SPの配線は断になっているのでSPからは音は出ません)

ただ この方式は致命的欠陥があります、絶対真似しないように。





外部に引き出されたスイッチ配線を整理中です。

どうもスピーカーの音を消して、クリスタルイヤホーンでモニター出来るように改造しようとしたようです。
回路的には 前述のように致命的不具合があります。
スピーカーの配線を切断してはいけません、G2にB電圧が加わった状態でプレート回路を断にすると、
G2電流が猛烈に増加して G2が焼けるのです(真空管がすぐ駄目になります)。

疑問に思う方は実験してみるとよいでしょう、猛烈なG2電流で吃驚するでしょう。
これはG2が3極管のプレートの働きをするからで、直ぐ実験をやめないと真空管が駄目になります。

6ZP1のプレート損失最大 4W   G2損失最大 0.6W 。
プレートに電圧が加わっていると、電子はほとんどプレートに吸い取られてG2にはあまり流れない。

外部のスイッチ付近の配線を取り除いたところの画像

もともとプレーヤーを接続して音楽を楽しむため プレーヤー用のACコンセントが組み込まれています。
配線の接続から類推すると このACコンセントをクリスタルイヤホーンの端子に流用したと思われます。


この改造作業から予想できることは、技術力が怪しいと覚悟しておいたほうがよさそうです。

電源回路もB電圧が高いので、1段余分にフイルター回路を追加することにしました。



整理した後はこのようにしました。
電源ケーブルも危険なので新しいものに交換しました。

視聴のため 電源回路を含めすべてを修理(完全ではないが普通なら動作する状態に)して通電してみましたが、
無音です。
下記に とりあえず暫定的に修理した結果の画像(シャーシ内部)です。



調べてゆくと局発が働いていません。
どうもバンド切替スイッチの配線に問題がありそうです。
スイッチ付近の配線は 画像を参照ください。





上記スイッチ部分を基に接続先を記録して行きます。

コイルは無名で 端子の記号さえありませんので、非常に厄介です。
なおIFTはトリオ バリコンはナショナルです。



半日かけて行き先を調べました。
ところが行き先が正確かどうか知らべるうちに どうもスイッチの動作がおかしいことに気がつきました。
アンテナ線のリードと BC SWのコイルの線が接続されていないのです。
どちらかに接続すべきなのに導通がありません、スイッチとして働いていないと思われます。

接点復活剤をかけたり、いろいろ試行錯誤して リード線を外したりして測定した結果 
下記画像の部分に不良があることがわかりました。
なおこのスイッチにはB電圧のかかる部分がありませんので、接点復活剤をかけても漏電する心配は無いと判断しました。
(B電圧がかかる場合は危険)
幸い MWのみは受信できるので、不要なSW関連の配線の一部は外して これで使用していただくことにしました。
SWに切り替えた時 上記2回路のみ不具合があるのです。

SW受信を復活するときは同じスイッチを探して そのまま配線してください。
ただ 現在SWにしたときMWの発振コイルをアースする回路は取り外してありますので、必要に応じ追加してください。



最終整備後のシャーシ内部

IFの調整は全くやってありませんでした、455KHzに調整し、目盛りを合わせて トラッキング調整をして終了です。
未調整にくらべずいぶん高感度になりました。

アンテナ線は20cmくらいしかありませんでしたので 少し延長しておきました。
必要に応じて さらに延長してください。

ビニール線の先端の被覆を取り 別に数mのビニール線用意 先端を同じ状態にして 電線(金属部分)を接続すること。
(電気が通るように接続しないと効果ありません)
電波が弱い時はアンテナ線は屋外に出してください。


B電圧は整流管のFのところで250V(12FのプレートでAC250V 無負荷でAC275V)です。
1段目の平滑抵抗は220Ω ここで240V 3KΩの抵抗の出側で175Vでした。



TBSを受信しているところ。
マジックアイは新品です。

なお他の真空管はあまり使用されていない感じです。
TV−10で測定してもGMは充分です、もしかしたら組み立ててもあまり使われなかったのかも。
あるいは最初から正常に動作していなかったのかも。
マジックアイは東芝の中古品が組み込まれています。
真空管は3流メーカーの製品、キットによくあるタイプです。



ラジオの背面から見た画像

なお出力トランスは断線していました、東栄トランスのものを組み込みました。
最近のものは昔のものに比べコアが小さいので、スピーカーに取り付けるとき工夫が必要です。
キャビネットの表示面の印刷は取れやすいので清掃はほどほどで止めました。
うかつに清掃すると印刷が消えます、充分ご注意ください。






2018年1月14日
2018年1月15日
2018年1月17日:300





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