自作5球スーパーラジオの修理


自作したがどうしても音がでないというラジオの確認依頼がありました。
6WC5 6D6 6ZDH3A 42 80K 6E5のマジックアイ付スーパーです。
ただ 単純にはこの組み合わせでも良いのですが、致命的欠陥が有ります。

トランスは並四か高1用のトランスです。
5V     0.5A
6.3V   1.5A
250V   40mA 

一方 80Kは双2極管でヒーターは5V 2Aです、トランスの容量の4倍もの電流です。

6.3Vのヒーターは 
 6WC5  0.35A   
 6D6    0.3A
 6ZDH3A 0.3A 
 42     0.7A
 6E5    0.3A
PLランプ  0.15A

合計すると2.1Aです、トランスの容量は1.5Aですから40%オーバーです。 一見大丈夫そうに見える構成も、トランスまで考えるととても実用的に使えないのです。
普通は少し電流容量に余裕を残した状態で使うのが正常なのですが、大幅ーオーバーはいけません。

B電流はなんとか40mAに収めるとして これでは危険です。


まず 6WC5 6D6 6ZDH3A 42 12F の構成で試験することにしました。

回路図は



作成した ラジオの回路図です。

この時代の目に見えない約束事

昔のラジオの回路図にはバリコンにトリマが書き込まれていないものがあります。
この回路図もそのようになっていますが、
これは2連 3連バリコンには当然トリマが組み込まれていたからです。
記号が省略されているに過ぎません。
ところが1955年ころから短波付の2バンドラジオが出回るようになると、
バリコンにトリマが付属すると多バンドの場合不都合なので(バンド毎にトリマが必要)
それ以降のバリコンにはトリマが無いものがあるのです。

これらが混在するので ややこしいのですが、バリコンにトリマは必需品と考えてください。
最近の書物を見るとこのことを知らずに書くのか、著者の知識を疑うようなものも散見されます。

トリマが無いと目盛りも合わせられず、感度も悪くなるのです。
これは実際 ラジオを作ってもらえばすぐ判ることです。

6D6のシールド
この真空管はシールドケースを使うことが前提です、周りの点線はそれを示しています。
シールドケースは必ずアースすることが必要です。

またシールド線を使う場合も同じです、外周の点線部分も必ずアースしてください。

昔のIFTはネジが旧JISネジです、最近のネジは使えません。
このラジオは不思議なことにIFTも現行のISOネジが使われている感じがします。
どうなっているのでしょう。
旧JISネジは昭和42年頃まで使われていました。

今回は使いませんがmT管のソケットの中央ピンはシールド用で、高周波用の真空管は必ずアースしてください。
この辺は拙著「真空管式スーパーラジオ徹底ガイド」に紹介しています。








まず配線の間違いを探します。

半田付け 配置は素晴らしいです、とても最初に組んだラジオとは思えません。
ただ経験の無さか耐圧に対する考えが薄いようです。
それと単位を間違えて 6ZDH3Aのプレート回路に100PFの代わりに100μFのコンデンサーが組み込まれています。
1000000倍の容量ですから音がでるわけがありません。
他に6D6のG2のバイパスコンデンサーに50V耐圧のフイルムコンデンサーが使われています。
この部分は最低でも200Vくらいは欲しいです。


バリコンのショート

バリコンの羽根が入りきる寸前でショートすることが判りました。
容量を測定してみると310PF以上はショート状態になります。
どの部分でショートしているのか探して修正しました。
組み立てた時 多分羽根にさわり変形させたのかも知れません。
どの部分で接触しているのか見つけるのは意外と難しいです。

最大容量は370PFくらいだと判明しました。
ところがコイルは430PF用のものが使われているので、かろうじてIOAK(594KHz)が受信できる程度です。
これでは困るので パディングコンデンサーに100PFを抱かせて550KHくらいまでは受信できるようにしました。
ただトラッキングは全受信周波数で取れませんので 地元の放送局付近で最高感度になるように調整しました。








ブロックケミコン付近
平滑回路の3KΩの抵抗は3Wを使うべきです、ここに1Wが使ってありました。
音質調整用のチューブラコンデンサー これは新品でも劣化しています、使わないほうが無難です。
同軸ケーブルは片側でアースに接続すべきです、浮いていました。

音量VR付近
スイッチの配線が無茶苦茶です、スイッチには3端子がでていますが、端子を間違って配線してあります。
テスターを使い どの端子が配線図のどこに相当するか確認して配線してください。
ラジオに切り替えた時 6WC5の第3グッドをアースする配線になっていました。
これで受信できませんので 配線をきってあります。
その他かの配線も怪しいが ラジオはこのままでも受信できるので、詳細は確認していません。
外部入力を使う時は再検討が必要です。

IFTの”F”配線
IFTのマイナス側の配線ですが、何故か初段と検波段のF端子がケーブルで直結されていました。
これは間違いなので切断しました。
コンデンサーの耐圧不足 ケミコンには回路図に耐圧がかかれていますが、その他のコンデンサーには記載がありません。
これは最低500V耐圧(ペーパーコンデンサーは試験電圧1000Vといわれた)を使うのが常識でした。か。かれています
だれも試験電圧1000V(相当怪しいが)を使うという前提で回路がが
ケミコン以外にそれより低い耐圧のコンデンサーは普通は市販されていなかったためです。

IFTのマイナス回路などTR用の50V耐圧で充分使えます。
ただB電圧が加わる部分にはそれに耐える電圧のものが必要です。
この程度のラジオの場合 普通は500V耐圧を使ってください(コンデンサーは特に断りの無い限りDC耐圧です)。
AC電圧の加わる部分は最低でも3倍の耐圧が必要
なお出力管のプレート回路はAC分が重畳しますので、充分注意が必要です。
(公称1000V耐圧のペーパーコンデンサーがパンクすること多い)

 

最終的に 出力管を6G6Gに交換することにしました。
42でも動作はするのですが、トランスに無理な負荷が加わるので、
6ZP1とほぼ同じ規格で ヒーター電流が0.15Aの6G6Gに交換することにしました。
これでヒーター電流はPLを入れても1.55Aに収まります。







2018年5月5日








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