自作 5球スーパー(UNIONケース入り)の修理

キャビネットキットを使った自作スーパーです。
6WC5 6D6 6ZDH3A 42 80BK 6E5の構成です。
ケースは当時流行のデザインですが 作りは非常にお粗末です。
板厚が薄いので 輸送中にスピーカーが落下するほどです。
バッフル板が薄いので木ネジが効かないのです。



キャビネットの前面です、ダイアルの板も一部割れています。



取り出したところです。




なぜかネジが全般に緩いです、ソケットの固定まで緩いのには驚きました。
バリコンなど1cmも浮き上がるほどです。



シャーシ内部



シャーシの端には 見慣れないコイルが、それにプラグもあります。



このラジオはすべてにおいてネジがまじめに固定されていません。
ここまで酷いものは初めてです。



バリコンのトリマが壊されています。



シールド線の配線は良いのですが、肝心の外周部分がアースされていません。



アースをとって完了。



この状態で受信してみました。
短波がうまく発振しません。
MWは受信するのですが ビートがおきて最高感度にできません。

ケミコンは劣化が激しいので、切り離しチューブラ型を追加しました。

IFTのインピーダンスが高くなり、発振しているのではとダンプ抵抗をいれてみましたが効果ありません。


基本的短波の受信は諦めることにしました。
本来なら 音量調整のVRの位置にバンド切り替えSWが組み込まれても良いはずですが、キャビネットの表示位置が、
ここなので指示どうり組み込んだのでしょう。
あるいはNSBチューナ式の簡単なコイルを使う方式だったのかも知れません。
コイルに組み合わさっているパディングコンデンサーもSW用はQが落ちているし、容量も記載がありません。
MW用はなぜか560PFもあるのです。
こちらはQが落ちていないのですが容量が変です。
ところが 受信周波数の低いほうはなぜか正常の位置で受信できるのです。
調べてみると発振コイルの容量が106μHくらいしかないのです、

取り外してみると 


どうも接着剤で固定したらしく ネジが接着剤でコアを入れる方向に動かせないことが判明しました。
106μHまでしか変化しません、コア入りなのに変です。

接着剤を清掃して、120μH付近まで増加させました。
パディングコンデンサーも430PFに交換しました。
これでトラッキングが取れるはずです。

ここまで分解しないと原因がわからないのですから、作業は大変でした。


 


MW専用に変更しました。
まだ一部にビート音が出ますが、正常に受信するTBSで音が歪むのです。
マジックアイは信号が強すぎるほど閉じています。

調べてみると、6WC5にAVCが加えられていないのです。
MW SWの切り替えを接点数の少ないスイッチで行うために、アンテナコイルの同調側のマイナス端子をアースしてあるのです。


本来ならバンド切替SWは音量VRの位置へ、
コイルはその後ろ付近(バリコンの下)
に組み込むと配線が短くなります。
短波受信機の切替のための配線を長々と引き回すのは無謀です。

今回は見たことも無いようなコイルだったので、
個別に切り離してインダクタンスまで測定した。
もちろんパディングコンデンサーも。

当時流行していたNSBチューナーのような簡易型のコイルを流用したのかも知れない。

パディングコンデンサーもなんとなく怪しいもので、これも流用品か?。

6WC5にAVCをかけるように変更して、TBSで音が歪む現象は無くなりましたが、まだビートは出ます。





コイル上端の端子を遊ばせ、タップ位置のバンド切り替えSWへの配線を切断。
この位置からバリコンに接続しました。

実はタップは配線を切断しただけでよいと考えたのですが、
マジックアイ表示でアンテナコイルのピークが確認できません。
巻き数が多すぎるようなのでSW用コイルを使わないようにしました。

これえで一応とランチキング調整もできるようになりました。
ただ問題はバリコンのトリマで、この部分壊されていましたので、
手持ちマイカとねじを使いました、不具合があるようでしめるとショートします。
ある程度だましだまし使ってください。


実は これ以前にマジックアイが異常に閉じる現象を見つけました。
またTBSを受信すると歪むのです。
調べてみると6WC5にAVCがかけて有りません。
SWとMWの切り替えを簡単なスイッチで行うためにコイルのマイナス側がアースされているのです。
(同調コイルのSWとMWの中点をアースすればSWのコイルに変身)
東京近郊で使うには不向きな仕掛けなのでAVCをかけられるようコンデンサーと抵抗を追加して改造しました。

4日間いろいろ試行錯誤しましたが、異常発振が落ち着きません。
IFTを最高感度に調整すると特定の放送局でビートが起きるのです、どこでもという訳ではないのが嫌らしいところです。
最終的に コイルのSW切り替えのリード線が怪しいと考えました。
MWのコイルの上側にSW用のコイルが巻いてあります(画像参照)。
SWに切り替える時はこのタップをアースすることでMWの切るをショートし、SWのコイルだけを生かす工夫です。
ところがこのタップがシャーシの中を遠くのSWの位置まで引き回されているのです。
タップですから、アースしない時は当然ハイインピーダンスでMWの受信入力になっているのです。
この部分を切断すると、あら不思議や発振はぴたりと止みました、原因はこれだったのです。
やっと原因が判明してよかったです。


源回路図と思われるもの


アンテナコイルのタップがシャーシ内を張り巡らされていた。
これは同調コイル(2次側)のインピーダンスをSW向けに下げるもので、
短波用の巻き数は少ないので、実質MWのトップを引き回したものと同じ効果がある。
ここから不要電波を拾ってくるので特定の周波数でビートを引き起こす。

修復回路図




ダイアルの糸も切れています、どのような仕組みだったかも判りません。
何とか工夫して、糸かけをしました。



キャビネットに組み込んだところ




裏側の様子



電源コードも勿論交換しました。

 修理が終わって

自作品とは承知で引き受けたのですが、想像以上に難題でした。
最初の組み立て時 ネジがまともに締められていない、これほど酷いものは始めてみました。
半田付けがうまくない、だいぶ やり直しましたが過半数は組み立て時の半田付けが残っています、振動で不具合が起きることはありえます。

もともとのキットの設計が悪い。
2バンドのコイルの切り替えを、このような配置でするのは無理がある(コイルの配線を長々と引き回すのは無謀)。
バンド切り替えスイッチが中央より左よりに配置し、コイルは右端に配置するなど信じられない考え方。
これで正常に動作するとは考え難い。
IF以降は半田付けとねじ締めを除けばほとんど問題ありませんでした。
最大の問題は素人が設計したようなキャビネットキットを使用したことでしょう。
SW MWの切り替えなどスイッチの接点数を省略するためか、見たことも無いような回路になっています。

最後まで泣かされたのはMWとSWの接続点とバンド切替スイッチとの配線でした。
この配線を外さなかったのが大失敗でした。




2017年1月15日
2017年1月16日:166
2017年1月18日:202







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中津

真空管ラジオ