三菱 SC−13の修理


綺麗に梱包されてきたのですが、開封したとき なんとなく違和感がありました。

取り出してみると 接着剤が取れたらしく キャビネットがバラバラなのです。
外形は保っているのですが、構成する木片がバラバラと箱の中から落ちてきます。



ラジオ本体を取り出したところ。

中から木材の破片が・・・。



修復作業中です。

保管場所が湿気の多いところだったのかもしれません。
ここまで酷いものは非常に珍しいです。



ラジオ本体を外してみると 最初はダイアル糸は正常でしたが、少し動かしてみると切れてしまいました。
あわてて 現状の写真を撮影しておきました。
特に 曲がり角にどのようにいとが掛けられているかが重要です。



シャーシの内側の画像です。
まず電源トランスが正常かどうか確かめる必要があります。
整流管を抜いて 通電してみました。
ただここで 大問題を発見しました、高圧の巻線電圧が異常に高いのです。

このラジオはフイルドコイルつきのいわゆるダイナミックスピーカーが使われています。
回路図によるとB電圧は整流管の直後で260V 平滑後で200Vとなっています。
ということはAC電圧は260V程度のはずなのですが、無負荷で330Vあるのです。
20から30%も高い電圧が出るということは普通では考えられません。






上記の状態で受信してみました。
正常に受信できることは判明したのですが、電圧がどうもいけません。
電源トランスが(もしかしたら替えコイルかも)が違うものが使われているようです。
B電圧だけ異常に高いのです。
出力管は42ですからこの電圧でも42そのものは使えないことは無いのですが、
IFとコンバーター管のスクリーングリッド電圧が100Vを越えて危険なのです。
この部分は80Vくらいに設計してあるのが常識的な値です。
ヒューズの位置を入れ替えて110Vにして実験してみましたが、B電圧はよいのですが、ヒーター電圧が下がりすぎます。
B電圧回路に抵抗を入れるか整流管の直前に抵抗を入れるかで試してみました。
まず最初に300Ω2Wの抵抗を整流管とトランスの前に入れてみました。
これは電圧が下がるのですが W数が小さすぎたようで 高熱になるので諦めました。
次に平滑回路に入れてみましたが、これは抵抗値が足りないようで、思ったほど下がりません。
最終的に 470Ω 10Wのセメント抵抗を入れることで、まあまあの値になりましたので、
これでよしとすることにしました。

なおこの抵抗の位置は複雑な電流波形が流れるようで電圧降下は激しいです。
直流電流値は45mAくらいと想像しますが、100mA相当の電圧降下になります。

 ヒューズの位置    トランス出力 整流管のP電圧   整流管のK電圧  B電圧 42 K電圧   6D6 G2電圧  42のP  
100V    320V(AC)    310V  250V    100Vオーバー    危険なので中止
110V    290V(AC)    290V  235V       6.3Vが5.5Vに下がる
 100V トランスと80HKのP間に300Ω2W  320V 285V            発熱で実験中止 
 110V 80HKとフイルドコイル間に470Ω   315V    315V  240V        6.3Vが5.5Vに下がる
 100V  トランスと80HKのP間に470Ω10W 310V(AC)  260V(AC) 270V  215V  13.5V  88V   203V  最終的にこれにした





電圧降下用の抵抗はシャーシにネジ止めしました。
高温になりますので シャーシが放熱板の役割も果たすでしょう。

整流管とトランスのB巻き線の間に入れたことがわかると思います。



山際卸商報





動作中のCS−13 マジックアイは中古品の為 光りません。




新品のマジックアイを組み込んだところです。


このラジオは修理完了後 長時間の通電試験を行いました。
トランスがレヤーショートしていて加熱するのではと心配したからです。
この点は大丈夫でした。

結論的に トランスのコイルが一般的なダイナミック用に交換され多ものらしいと判明しました。
このラジオはB電圧が低く設計されていて、当時の常識的な電圧より相当低いのです。

一般的なトランスは300から330Vくらいでしょう、このラジオは250ないし260Vくらいに設計されているのです。
この差が原因と考えるのが正解らしいと思いました。
(2018年2月27日追記)

2018年2月24日
2018年2月27日:208








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