ナショナル ER−241の修理


整備済品を購入したとのこと。
音が悪いとのことで 整備を依頼されました。




シャーシ内部の様子

よく見ると 抵抗に焼けた跡があります。
焼けた抵抗を再利用するとは相当の素人修理です、驚きました。
特に 焼損1と記したものは誤配線かと最初は思いました。


RF増幅の58のカソード抵抗(普通は300Ω)のアース側と出力管のG2の間に配線されているのです。
これは全く 不要な配線と思いました。
想像するに 感度調整用VRのプラス側にBより分岐した配線が必要ですが、
この部分は別に配線されていて常識的には不要なのです。
でも使われているVR(20K)が中点アース式(軸がアースされてる ものすごく古い形式)なのに気がつきました。
これだと300オーム側にもプラス電位をかけないとカソード電圧が 数Vまでくらいしか可変できません。
75Kオームを2個直列に接続して B電圧から VRに電圧を加える方式としました。
オリジナルがこのようだったのかは不明です。 






到着したとき無音だったのは どうも58 57のグリッドキャップの接触不良ではないかと思われる。
開けてみて 抵抗の焼けた状態をみて驚いたが、無音の原因は別のところ(上記)だった。
なお 上記を修理して通電すると ハムが多い、さらに3YP1のプレート電圧が異常に低い。
100Vくらいしかない、これは異常です。
調べてみると バイアスが掛かっていない、ヒーターは巻線の中点がアースされているのです。
ノーバイアスで働いて 3YP1に無理がかかり 電流が増加して 電圧が半分以下になっていたのです。

これは半固定バイアスでは疑いました、掲示板に書き込むと倉島さんから情報をいただきました。
さらに調べると 配線は確かに半固定バイアス方式でやられています。
配線の失敗はa点のコンデンサーが無かったのが原因でした。
なおaのコンデンサーは400V 15μFのケミコンです、これを追加しました。

半固定バイアスはコンデンサーの扱いが普通と違うのです。
このラジオの修理をしたかたはわざわざアルミで箱を作り その中に収納しています。
お気の毒ですが、これが間違いの元です。
余分な作業をして間違うのですから 止めたほうがよいです。

半固定バイアスについては「拙著真空管スーパーラジオ徹底ガイド」に記載があります(下図参照)。


なお半固定バイアスは 当時流行した方式で 非常に合理的なのですが、流行は一時的でその後ほとんど使われていません。
そのため この方式に言及した書物は非常に少ないと思います。
ただ間違うと重大事故を起こすので、首記著作にはあえて説明を入れてあります。

なぜ原理的には理想的な回路が廃れたかは部品の質の問題があったと想像します。
日本製の高抵抗は比較的 断線しやすかったのです。
バイアス回路が断線などで切断されると出力管が過負荷となり、重大な故障を引き起こすのです。
(アメリカ製のラジオには相当後日までこの回路が使われていて 実用的に問題なかった)
カソードバイアスの場合は このような現象が起きません。
今回の不具合の原因は上記回路図のC12にあたるコンデンサーが無かったことによります。
プラス側が共通でマイナス側が個別に引き出す必要があり、コンデンサーを容器に入れたことでこの対策が忘れられ、
今回の障害を引き起こしたものと思われます。

ではなぜC12が無いと 異常バイアスになるかというと、オシロスコープでB点を測定してみると明確にわかります。
実はコンデンサーが無いと10V/divレンジでフルスケールの交流信号が観測できます。
あまりに高電圧なのに あわてて 測定をやめた。
言い換えると 3YP1のGにはこの電圧を抵抗で分割した100V以上の交流信号が加わっていたらしい。




2018年8月16日








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中津

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