ナショナル 真空管ラジオ HS−750の修理


なかなか程度良い外観と思ったのですが、分解してみると大変なことに。
例のPLの線はボロボロです、これをやり直しました。
ナショナルのこの色の線のみ ボロボロになるのですから不思議です。





電気的に修理する前に 物理的な不具合が見つかりました。
ダイアルの糸かけが怪しいのです。


プーリーとダイアルの糸は平行でなくてはいけません。
相當歪んでいるのです。
赤い矢印の部分がずいぶん歪んでいます。


歪みの原因はバリコンの保持ゴムが溶けて駄目になっているのです。

歪を修正して ダイアルを動かしてみると、どうも動きが変です。
写真は前面の金属パネルを外して撮影しています。



どうも昔 修理した時 ダイアルの糸かけを間違えたようです。
ずいぶんギクシャクした動きだったはずなのですが見逃したのでしょう。
下図のように修正して 完了です。




前面パネルを組み込んだところ。




電気的不具合は リード線式のブロックケミコンはまず故障です(取りはずしたものをシャーシ下部に)、まず取りはずします。



ペーパーコンデンサーを交換し、通電してみると 異常にB電圧が高いのです。
音は正常に出ますが、これでは出力管がたまりません。
トランスにはAC240Vと書いて有りますが、実際は250V有ります。
整流後の電圧は250V表示のところ 実測は275V出ました。
整流管は 回路図上は12FKですが、このラジオは80BKが使われています。
12FK 80BKの内部抵抗の違いもあるかと思います。
平滑抵抗は2KΩが使われていましたが、これでは平滑後のB電圧が高すぎます。
まず3KΩに変更してみました。
これでも220V位にしかなりません。
カソードバイアスを引いても 出力管の定格をオーバーします。



出力トランスも断線しています、これも交換しました。
この時代の出力トランスは断線していることが多いです。




最終的には平滑抵抗を5KΩとしました。
これでB電圧が180Vに下がりました、これなら6Z−P1に無理がかかりません。
また6D6のG2電圧もこれで100V以下になりました。

ただもともとの設計が6Z−P1の定格をオーバーするような設計になっていたようです。
当時としては安価だった真空管ですので、多少の無理は承知だったのでしょうが・・。
現時点 高価な真空管を無理して働かせる必要性は有りません。





実はVRは千石で購入したものを組み込んだのですが、どうしても外部入力が使用したいとの要望がありました。
千石の500KΩはスイッチつきなのですが、ON OFFしかできません。
外部入力の切替には使えないのです、切替式のスイッチ付VRに交換して配線をやり直しました。
切替式SW付のVRは残り少ないので、これからが大変です。



受信してみると なんとなく発振ぽい感じです。
アンテナコイルがハイインピーダンスなので、これが悪戯しているようです。
80PFのコンデンサーをパラに入れて 共振周波数を下げて対策しました。
矢印の先が今回挿入したコンデンサー。




このラジオは意外と手間がかかりました。
工作の不具合対策で散々悩まされたところです。





ナショナル HS−750回路図。


2013年4月10日



2台目の修理(2018年4月29日)


音が正常にでるがなんとなく心配ということで引き受けました。
ところが 開けてみると ここまで酷いものは珍しいというくらい悲惨な状況でした。
出力管のグリッド電圧を測ってみると数十Vにもなります。
カソード抵抗は変色して 多分発煙したのではと思われるほどです。
普通 この部分の電圧は1V程度で 高くても数V程度です。

ただ これだけ電流を流したので 真空管が劣化しているのではと心配したのですが、
こちらは全く問題ありませんでした。
通電時間が比較的短かったのかも知れません。

当然 電源のケミコンも駄目です。
経験上 リード線タイプでピッチで密封してあるタイプのケミコンはまず100%駄目です。
配線を切断して ケミコンはそのまま残してあります。




ケミコンテスターによる 平滑用ケミコンのテストです、
でもこのタイプのブロックケミコンはほぼ100%駄目なので、ケミコンのテストと兼ねて出力管のグリッド電圧の測定です。

結合コンデンサーのリークが酷いことがわかりました。

6ZP1のカソード抵抗

見事 過電流で焼けています。
カップリングコンデンサーがリークしているので プレート電流が沢山流れたのでしょう。



第1回目の修理

ケミコンを交換、ペーパーコンデンサーを交換して 動作できるようにします。
正常に 音がでるので 真空管 IFT バリコン コイルは正常ということが割判りました



第2回目の修理

このラジオの電源トランスは240V表示なのですが、実電圧がずいぶん高くでるのです。
上記回路図のA点の交流電圧は260V(トランスの表示は240V)です。
整流後の電圧(C点)は280Vになります。
平滑後の電圧(D点)は250Vです。
出力管6ZP1に対してはいかにも高すぎます。




まず平滑用の2KΩの抵抗を3KΩに交換してみましたが、B電圧が230Vくらいに落ちる程度でまだ高いです。



回路図ともあまりに違うので いろいろ調査したところ、整流管が12FKでは無くて 
80HKに交換されていることを発見。

やはり 手持ちの12FKで試験すると電圧がだいぶ落ちます。
あまり深く考え無かったのですが、だいぶ性能に違いが有るようです。

第3回目の修理

最終的に A点とB点の間に220Ωの抵抗を挿入して、電圧を落とすことにしました。

これで A点 260V、B点 245V C点260V D点200V E点 100Vになりました。







2018年4月30日:1,795









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