シャープ RSー350の修理

60年分の埃が詰まった すごい汚れです。
なお ナショナルのラジオでもよくある配線の劣化がより激しい状況です。
ナショナルでは正常だった マジックアイの配線までボロボロです。

高周波1段増幅付きのスーパーで  当時としては最高級受信機です。
送られてきた時 新聞紙が詰めてなかったため 整流管が外れて 箱の中で泳いでいたようです。

幸い割れてはいませんでしたが 何故かヒーターが点灯しません。
外観は正常なのにおかしいと思い ベースの半田を付け直したら 回復しました。



シャーシ内部の状況
平滑抵抗が焼けています。
どうも後日判明したのですが 素人が整備したのか 10KΩの抵抗が3W 5KΩに変更されています。
最初から この状態と思ったのですが 整備後 電圧を測定すると6D6のG2が100Vを軽く越すのです。
回路図を調べると オリジナルは10KΩでした。
多分これが原因の一つと思われます。



今回配線が ボロボロになっている割合が非常に多かったのですが、実はもっとも困ったのは電源トランスの断線でした。
1次側が断線しているのです。
このような1次側の断線は非常に珍しいです。
トランスにはヒューズホルダーを背負っているのですが 110V 100V 90Vの端子間でも導通が無いのです。
また引出線の両端も簡単に切断しました。
どうもトランスの引出線に配線と同じ被覆が使われているようです。
もしかしたらビニール絶縁ではなくて ゴム絶縁かも知れません。
被覆がボロボロになるだけでなく 銅線部分が痩せているのです。
被覆部分から有害ガスでもでて 銅線を腐食させた可能性も考えられます。



電源トランスを探す 作業までやらなくてはなりませんでした。




修理後のシャーシ内部。

電源トランスは B電圧(300V)が全く同じで電流容量が少し大きい物が見つかりましたので 利用することにしました。
本当は250V程度のものが良かったんですが 偶然とはいえ300V 80mAで寸法的にも積めるので良しとしました。
ただ惜しむらくはレギュレーションが良すぎて整流後の電圧が高くなりすぎるので 整流直後に1段フイルターを付加しました。
もちろん ケミコンは使えませんので 交換しました。

電源トランスにはヒューズを背負っていませんので ヒューズホルダーを組み込みました。

それと 音量調整VRはラジオと外部入力の切替スイッチが付いていますが、
2回路2接点の特殊な構造で現時点入手不可能なので PU端子の隣に ラジオとPUの切替スイッチを付けました。
PU(レコードプレヤー)を使う時はVRをオフの位置にして この切替SWを下側に倒してください。
逆に スイッチを上側にしないとラジオが受信できません。

音量調整用VR

この時代のVRはまず使えません、悪いことにスイッチが2回路あり 2回路ともオンで同時に接続する接点方式です。
現時点 この様なスイッチ付きは入手出来ません。
外部入力時は別のスイッチで切り替える方式にしました。
この種スイッチ そのものは入手は簡単なのですが 鉄板に穴あけして組み込むのが大変な作業になります。






なお 音量ですが 最小音量は残念ながら 無音にはなりません。
結構 大きな音がでます、原因は6ZDH3Aの構造にあります。

高周波増幅付きの為 電波(IF信号)が強く 2極管部の高周波信号が直接 増幅部の3極管に回り込んで検波されるためです。
検波は6ZDH3Aのプレートに誘起した高周波電圧を42と合成して検波している可能性があります。
と言うのは6ZDH3Aのグリッドをアースしても音が更に小さくならないのです。
当然 VRの中点(増幅部のグリッド)をアースしても音が出るのです。 
これは構造的な問題なので このまま利用するしかありません。



調整中のシャーシ







試験用マジックアイを使って 調整中です。
IFTを455KHzに調整し ダイアル目盛りを紙に写して ダイアル目盛りを合わせます。
トラッキング調整をして終了です。

 





ラジオをキャビネットに組み込んだのですが ダイアルがスムーズに動きません。
一応 正常に動作するのですが 稀に途中で引っかかるのです。
本体側の取付板が錆びていること シャーシの下に組み込まれているゴム足の高さが 経年変化で沈み込んでいることで、
ツマミの軸 やダイアルの糸が 正常に動かないのです。

ダイアルメカの構造

以外に凝った作りなのは良いのですが 経年変化で 高さ不足で上手く動かないのです。



ゴム足にボットボンドを盛りつけて 少し 足を高くしました。



これで組み込みましたが 輸送中に 振動で 取り付け寸法が変わるのではと心配です。





外部入力の切替スイッチに説明を付加しました。
ラジオを聞く時は スイッチを上側に倒してください。




今回交換した部品 想像以上の物量になりました。




2016年6月15日
2016年6月18日:055







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中津

真空管ラジオ