東芝 612A?の修理

6WC5 6D6 6ZDH3A 42 80HK 6E5の6球スーパーです。

どうも素人が弄ったようで、シャーシの固定ネジに見たことも無いようなネジが使われています。
六角レンチで締める方式で もしかしたらインチネジかも知れません。
取り外しに苦労しました。

違うネジが無理やり締め付けられているので簡単に外せない無いのです。
ネジザウルスを持ちお出したりして なんとかシャーシをケースから外しました。
画像はシャーシ内部。





東芝の513などとずいぶん違う配置です。
ケースの外観から 612Aでは無いかと想像しました。
ただこの機種は回路図がありません。
6ZDH3Aにはカソードバイアスがかけられているなどずいぶん凝ったつくりです。
ただ中央のスイッチつきVRの配線がなんとなく変です、もしかしたら素人が改造したのかも知れません。

できるだけ オリジナルに近いように修復しようと考えて 注意深くコンデンサーを交換してゆきます。

なお 名板は削られて 文字が全く読めません。
IFTがキクナに交換されています。

スピーカーは断線が無いことは確認できたので、電源トランスを確認 これも大丈夫です。

次はバリコン IFT コイル類の試験です。

バリコンは糸かけは糸とバネも欠品、バリコンにいたっては脚がありません。
糸かけは後日にし、まずバリコンのシャーシへの固定をする必要があります。
取り付けゴムが全くなくなっているので、適当なゴム部品を探して 何とかバリコンを固定しました。

次にコンデンサーと電源コードの交換です。
ケミコンなど最低必要限のものを交換して通電試験です。

下記画像は試験中の写真、ただし試験後IFTを取り外しています。



なぜ取り外したかと言うと 猛烈に感度が悪いのです。
経験上 これで受信できるという見込みの状態で感度が極端に悪い。
アンテナコイルの2次側のホットポイントにSSGの出力を接続しても微かにしか音が聞こえないのです。

IFTを調整すると調整箇所4個の内一部では無反応、一部では微かに感度がよくなります。
この現象はIFT の不良と想像できます。

なおこのIFTはオリジナル品ではありません。
キクナの製品です、この会社はアマチュアー向けにIFTを販売していました。
たしか東横線の菊名の近くに会社があったはずです。
一流品というより普及品ですね。



そのため取り外して コイルとコンデンサーを確認してみました。
2つあるコンデンサーの内1個は200PFでしたが、もう一つは18.7PFしか有りません。
これで感度がひくいのも納得です。




200PFのスチロールコンデンサーを付加して修理完了。
なおこの部分は温度係数も関係するのでスチロールか マイカ または温度補償がたのセラミックコンデンサーが必要です。




ここで一旦終了していたのですが、翌日 残りにIFTを分解してみました。

こちらは不思議なことに85.59PFです。
もう一つも95PFくらいでした。
Qが少し低いので こちらは2個とも100PFの温度補償型ラミックコンデンサーを組み込みました。
(頭が黒いのが温度係数0)
本来なら補償でもコイルの温度係数を打ち消すのが理想ですが。





ただ同じメーカーのIFTでA Bそれぞれに違う容量(それも2倍も)の同調コンデンサーが使われているのには驚きました。
検波段の方が容量が小さいとは・・。
この部分は疑問です。
それにケースに印刷した文字も全く同じなので非常に不思議な感じはします。
普通は型名A  型名Bのように区別するのですが?。
外観はこちら

まさかこうなっていることが判っていたらコイル間の寸法を測定しておくべきでした。
今回交換したコンデンサーです。
表示容量は推定値です。
なおQも測定しましたが、相当低下していました。
残しておいた1個も交換しておけば良かったと反省しています。



IFTの分解修理は取り外しの手間がかかるので、よほどのことでないとやりません。
もしかしたら オリジナルのIFTが壊れた時に 適当に組み合わせて対にしたのかも知れません。

 



ダイアルの糸かけです。


前面パネルを外さないと 糸かけができません。
バネも無くなっているので手持ちのジャンクから移植します。
構造は簡単なのでその点は楽なのですが、準備作業が手間取りします。

なおバリコンの固定ゴムが全く 空白になっていましたので、
工夫してゴムを組み込みました。



前面パネルの無い状態でのバリコンと糸かけ。
バリコンの脚にはゴムが組み込まれています。



代用マジックアイを使って目盛りあわせとトラッキング調整。
勿論 事前にIFTの調整は済ませます。



IFTを455KHzで調整し、目盛り合わせ。

600KHzと1400KHzの部分に印をつけ 目盛りあわせをします。

実は下記のシャーシ内部の状態では600KHzが合わせられませんでした。



594KHzのJOAKを合わせよとすると、全く合いません。
調べてみるとパディングコンデンサーに使われている固定コンデンサーの不良でした。
300PFのマイカに取り替えて調整しました。

マイカが容量抜けを起こしていたようです。



この部分は温度変化の少ないマイカコンデンサー(300PF)を使います。
容量はある程度”勘”で決めますが、普通はパディング全体で430PFくらいなので、
トリマの容量と合算した数値が430にほぼ合致するようにすればよいわけです。
最終的には どれ位が必要かは目盛りの合わせ具合を読み取り決めます。



キャビネットに組み込んだ状態です。
ネジを外す時はえらく苦労しましたが、組み立ては楽にできました。
心配していたのですが良かったです。

なかなか快適に受信できます。

後日の補修のため テープが貼ってあります。
JOAK(594KHz)を受信しているところです。
簡単なアンテナで当然ですが関東地区の7つの放送局を受信できます。



背面の様子

なおマジックアイは全く光りませんので 接続してありません。



最終的なシャーシ内部

調整の過程で判明したパディングコンデンサーも交換した。
なおブロックコンデンサーは 配線を外して それぞれに回路に新しいものを使用した。

VR類は後日 依頼者が自分で交換するので そのままとしてあります。
ただPU切替回路が怪しいのと スイッチつきVRがスイッチが接点不良のためジャンパー線で接続しています。
(細い 白い線)

なお配線がなんとなく怪しいので よく研究して仕上げてください。

6ZDH3A付近の配線はオリジナルから改造されているとも思える状況です。
なお 6ZDH3Aのプレート回路のバイパスは予算の都合でつけてありません。
電源のケミコンがオリジナルの2倍以上の値なので、問題は無いでしょう。
抵抗も変色しているものがあるので 交換も考慮しましたが、予算の都合でそのままとしました。

正常に受信できることを前提に修復しました。





今回交換した部品

なおブロックコンデンサーは代わりの部品を組み込みましたが、
取り外してはいませんので、下記部品以外に電源の高耐圧ケミカルコンデンサーを交換。

このように素人が何度も改造を繰り返したラジオは普通に故障したラジオの修理に比べ
2から3倍の手間がかかります。

皆さんもうかつに手を出さない方が良いでしょう。
特に今回はIFTの不良という 事故に巻き込まれてしまった。
これをIFTの不良と見極める経験と修理する技量がないと対応できません。
なおIFT修理に使ったコンデンサーは簡単には入手できませんので、ご注意ください。



2018年3月3日


以下東芝の同じ時期のラジオ





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http://radiokobo.sakura.ne.jp/G/repair/513E.html







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http://radiokobo.sakura.ne.jp/G/repair/toshiba513H.html





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